お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「ウィナー家の者はいるかしら?」

「お約束はございますか?」

 対応してくれたのは見たことのない青年だった。オリヴィアは首を横に振った。

「いえ、約束はしていないわ。でも、いるならこれを見せてちょうだい。時間を取ってくれるはずよ」

「かしこまりました」

 庶民の服を着ていても、オリヴィアの立ち居振る舞いには上流階級の者らしさが溢れている。すばやくそれを見て取るあたり、ウィナー商会の人間というだけのことはある。

 オリヴィアが持たせた商会お得意様の印がついた板も物を言ったのだろう。

「お待たせいたしました、お嬢様」

「まあ、ダミオン。あなたが来てくれたのね!」

 慌てて奥からやってきたダミオン・ウィナーは、現商会長の三男である。

 父の商売を手伝うようになって十年ほど。二十代後半の彼は、オリヴィアとは昔からの顔馴染みだ。

 商人らしい相手の警戒心をといてしまう感じのいい微笑みに、丁寧な物腰。

< 95 / 306 >

この作品をシェア

pagetop