27番目の婚約者

26回目の婚約破棄

 ユラ公爵邸の最も見晴らしの良いテラス席にて。
「アリシア嬢、すまないが君との婚約を破棄させてください!」
 公爵令嬢のアリシアは婚約者から婚約破棄を一方的に告げられた。
 婚約してから1ヶ月後のことだった。これが想いを寄せいていた相手だったらアリシアはこの場で泣き崩れ喚き、最低男と罵ることもできた。
 ところが目の前の相手はよく知らない地方貴族の嫡男で、顔を合わせたのも婚約を結んだその日が初めてだった。特にこれといった思い入れもなく、失恋の痛みなんてこれっぽっちもない。
 アリシアの心の中で浮かんだ感想は一言。
 ――またか。ただそれだけだった。
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