27番目の婚約者


 アリシアは緩慢な動きでカップがのったソーサーを手に取り、一口お茶を啜る。ちらりと目の前の令息へと視線を向けると、再び視線をカップに戻した。

「……分かりました。婚約解消についてはお受け致しましょう。――ですが私の何がいけなかったのかその理由を教えて頂けませんか?」
「いや、君は悪くない。悪いのは僕なんだ! とにかく今日から僕たちは赤の他人だから!!」
 表情を強張らせる令息は、侍女が出したばかりのお茶を一口も飲まずに婚約解消の証明書類をバンッと机の上に叩きつけて逃げるように去っていった。


 一人残されたアリシアは再びカップに口をつけるとはあ、と深いため息をついた。
「縁談を断られた相手の数は25人。……いえ、今の彼をカウントすると26人になるわ」
 カップをソーサーにのせてテーブルに戻すと、目を伏せてこめかみに手を当てる。
 ここまで結婚が難航している理由が全く分からない。

 家柄に問題はないし、容姿だってそれなりに良い方だと自負している。なのに結婚適齢期の16歳になってからこの2年、縁談話が持ち上がって婚約まで辿り着いてもその先へ進めないでいる。
 長く持って2ヶ月、短ければ1週間で婚約破棄された。
 因みに先程の令息は1ヶ月。まあまあ持った方だ。

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