27番目の婚約者

幸せに包まれた結婚式の夜



 ◇◆◇

 ジェラールに求婚されてから2週間後。
 アリシアはジェラールが治めている辺境領で結婚式を挙げた。

 出席者はジェラールの屋敷に勤める使用人や関係者だけの細やかなものだったが純白のドレスに身を包んだアリシアは幸せだった。
 父には手紙で結婚を報告したが、相変わらずなしのつぶてで。代わりに送られてきたのは持参金だけだった。これで結婚や新生活の準備をしろということだろう。
 因みに留学中の兄にも手紙は送ったが、外国なので返事が返ってくるまでに時間を要する。
(せめてお兄様からは祝福の言葉はもらいたいわ)

 家族が誰一人として出席しなかったのは寂しいけれどアリシアは今、とても幸せだ。


 空には夜の帳が下り、静寂(しじま)が辺りを包み込む。
 オレンジのあかりが灯る寝室でアリシアは侍女が用意してくれた夜着に着替え、ドキドキしながらベッドの縁に腰を沈めていた。
(どこも変なところはないかしら。ジェラール様にみっともない身体だと思われたらどうしよう)
 アリシアは下を向いて自分の身体を隈なく確認する。
 肩には薄手のショールを羽織り、白銀の長い髪を三つ編みで一括りにして右肩に垂らしている。

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