27番目の婚約者
隣国との睨み合いは続いていたが5年前に隣国の国王が急逝し、新国王が即位したことで状況は一転した。無事に緊張状態が緩和して国境付近に平和が訪れたのだ。
だが、時既にジェラールの結婚適齢期は過ぎてしまっていて、彼は結婚を諦めた。
未だに顕在するその美貌をもってすれば、どんな女性もジェラールに求婚されて断る人はいないとアリシアは心底思う。
(だって、ジェラール様はこんなに素敵で格好いいんですもの)
大人の色気を纏ったジェラールを目の前にしてアリシアは頬を染めた。
アリシアに婚約破棄される原因があるのだとすれば、ジェラール以上に良い男はいないと思ってしまっているところだろう。
年の近い令息たちは誰も彼も子供っぽくて男らしさに欠ける。けれどジェラールには大人の余裕めいたものがあり、年の近い令息たちよりも紳士的でいつだってアリシアを宝物のように大事に扱ってくれる。
(ジェラール様が私の旦那様になってくださったらどれだけ幸せかしら)
しかしジェラールはアリシアのことを可愛い『女の子』としか認識していない。その証拠にアリシアが抱きついたにもかかわらず、動揺せずに昔と変わらず接してくれている。