龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「……ったく、アンタもアタシに似て頑固だね」
おばあさまは葉巻きをくわえ、ふうっと煙とともに息を吐き出した。さっきからスパスパ遠慮なく葉巻きを吸ってる……素っ裸で。
「ちょ、おばあさま。病人のいるところで葉巻きはやめてよ!ってか、服着て!」
「アタシの家の中だ。なにしようがアタシの勝手だろ」
ふうっ、とおばあさまはよりによって竜騎士さんの顔に向けて特大の煙を吐き出した。
「おばあさま!…あれ!?」
フッと鼻についたこの爽やかな薫りは…?
「……う」
竜騎士さんの口から初めて声が発されて、思わず彼の顔をじっと見てしまう。
すると、まぶたがわずかにだけど動いて。思わずおばあさまに抱きついた。
「おばあさま、竜騎士さんの目が覚めるよ!」
「ああ、ハイハイ。目ン玉剥いてよく見てるから抱きつくな暑苦しい」
おばあさまはとんでもないことに、竜騎士さんの口に自分の葉巻きを突っ込む。
「ほら、イケメン。勿体ぶってないでとっとと起きな」
「おばあさま!」
「ゴホッゴホッ!」
当然ながら、葉巻きの煙をもろに吸い込んだ竜騎士さんは噎せて咳き込んだ。だけど、まぶたがわずかに開いてる。
煙を吸い込んだあたしも咳き込んだけど、その薫りは不愉快なものでなくむしろ気分をよくするもの。おばあさまお手製のこの葉巻きはハーブでできている。しかも、あたしの知る限り最上のハーブを燻した煙。つまり薬効のあるお香と同じなんだ。
「……ここは?」
竜騎士さんのまぶたがゆっくり開き、淡い水色の瞳を見た瞬間。なぜか、胸が高鳴った。