龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
森の中に流れる川で複数人乗った木の小舟を発見。大きな袋からユニコーンの気配がするから、密猟の証拠はバッチリ。
「……いた!バーミリオン、旋回して!」
《おう!》
スピードを殺すため数度空中ターンを挟み、バーミリオンはあたしのお願い通りにゆったりとした旋回に切り替える。
(奴らはまだこちらに気付いてない……なら、先手必勝)
腰に提げた武器のうち、ショートボウを手にして矢をつがえる。
ロングボウと違い射程は短いけれど、この距離ならば十分狙えるし、連射も利く。
「バーミリオン、炎を吐いて!」
《あいよ!》
油を染み込ませた木製の矢じりをバーミリオンの吐いた炎で炙り、火を着火させてから狙いを定める。
鋭く空を切って一直線に飛んだ火矢は、木製の舟の縁に突き刺さる。それだけでは足りないから、次々と火矢を射って舟を燃やした。
案の定、密猟者たちは次々と舟から降りて川へ。あの川は浅いから渡河は簡単で、ユニコーンの入った袋も2人で担いで陸路へ向かうようだ。
あたしの狙い通り。
そして、次の狙いは奴らの足。動けなくさせるだけでいい。
力を込めてギリギリと弦を絞る度に、緊張が高まり汗が流れる。なるべく誰も傷つけたくはない。でも……やるしか、ない!
(今!)
矢が、放たれた。
鋭く空を切って一直線に飛んだ矢は、ユニコーンを背負った密猟者の足に命中。そのまま体勢を崩させることに成功した。
「次!」
ショートボウの利点は連射性。次に放った矢は、違う密猟者のふとももに刺さる。足止めは成功したようで、ほっと息を吐いた。