龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

《アリシア、まだ何人かいるぜ!》
「わかってる!」

バーミリオンの言葉通り、他の小舟も見つけた。
さっきと同じようにバーミリオンの炎を使い、火矢を射って舟を燃やそうとしたけど…そちらは反撃され、矢を射掛けられた。
でも、バーミリオンの見事な飛翔であっさり避ける。

《あらよ、っと》
「ありがとう、バーミリオン。助かるよ」
《ハハ、あんなへなちょこ矢でオレ様がやられるわけがねえよ》
「ほんと、あんたはいつでも最高のパートナーだよ」
《だろ?》

褒めると調子に乗るけど、今はそれでいい。

「密猟者はあっち!バーミリオン、急いで」
《ハイよ!》

(密林に逃げ込まれたら、姿を探すのが困難になる。なるべく今のうちに足止めしないと)

木々の密度が上がって密猟者達の姿が時折木に隠れ見えにくくなる。集中力を上げて木々の隙間を見定める。

(今!)

引き絞った弦を離し、矢を放った。

そして、次の木陰の切れ目に現れた密猟者の足に命中。そのまま密猟者はその場に倒れた。

(よし…これで最後かな)

ひと息ついた途端、シルフィーの叫びが頭に響く。

《アリシア、危ない!》

気づいたら、すぐ間近に槍が飛んでくるのが見えた。

(回避が間に合わない…このままだとバーミリオンに当たる!)

咄嗟にバーミリオンに当たらないように、体全体で彼を抱いて庇う。

《バカ!アリシア…なにをして…!!》

目をギュッとつぶって痛みを覚悟していたのだけど。


ギィン! と金属同士が激しくぶつかり合う音が響いた。
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