龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「本当に、後悔しました。偽の恋人なら、あなたがいつ離れてもおかしくはない…なぜ、もっと早く素直に告げなかったかと。でも、あなたがもし他の男性を好きになったなら…私は手放さねばならない。強引に自分のものにしたい…しかし、あなたの意思も尊重したい…いつも内心葛藤していました」

内心の苦悩を表すように、ヴァイスさんは目を伏せた。

「本来なら、竜騎士養成学校に編入した時点で手放さねばならなかった。
ですが、私は出来なかった。あなたの手を離すことが出来なかったのです…これは、ひとえに私のわがままでした」

余裕のない表情に、思わずクスリと笑ってしまう。

「……アリシア、なにを笑っているのでしょうか?」
「うん、ヴァイスさんがかわいいなあー…って」

ぽふん、と彼の胸に頭を預けて目をつぶる。
ああ、やっぱりヴァイスさんだな…って安心できた。

「……でも、本当によかった……ヴァイスさんもシルヴィアも無事で…でも、クロップス卿が」

ヴァイスさんとシルヴィアの無事は嬉しいけど、リリアナさんとクロップス卿父娘のことを思うと複雑だ。
ヴァイスさんも思うことがあったようで、あたしを抱きしめる腕に力が籠もる。

「……クロップス卿は私とは別の大隊を率いてらっしゃいましたが、最後までよく責任を果たしました。バイキングの大砲の直撃を受けながら、部下が撤退する最後の一人まで踏ん張り、立派に殿を務め上げたのですから…」
「やっぱり……勇気ある素晴らしい方なんですね。なら、きっと大切な娘を置いて逝くはずありませんよね…」

あたしがそう言うと、意外な声が聴こえた。

《……イッツアーリから報告があった……クロップスが意識を取り戻したそうだ》

それは、シルヴィアの“声”。
高位のドラゴン同士だと、距離があったとしても心と心で会話しあう“心話”か可能。だから、シルヴィアもイッツアーリと話ができたんだろう。

「本当に!?よかった…!」
「クロップス卿……よかったです」

あたしが嬉しさのあまり涙を流すと、ヴァイスさんもともに喜んでくれた。それが、何より嬉しかった。

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