龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「ああ、ダメダメ。この髪にその髪飾りは合わないわ」
2時間後……。
心身ともに疲労困憊なあたしの姿があった。
いきなり温泉に放り込まれ3人がかりで身体をゴシゴシ洗われただけでも衝撃なのに、その後香油を塗ったりマッサージしたり……顔にも色々塗られて、衣装部屋からたくさんの色鮮やかな服を持ってきたと思ったら、ああでもないこうでもないと衣装合わせが始まり……。
今度は1時間かけて決めた服に合うヘアアレンジとアクセサリー決め。
ドレッサーの前で半ば魂が抜けて脱力状態のあたしに、エリィの叱責が飛んできた。
「アリシア様、ちゃんと見てください!この花の髪飾りと鳥の髪飾り。どちらがよろしいのですか?」
「は、はいっ!」
ぴしっと背筋を伸ばして鏡を見る。さすが一流の侍女たちだから、あたしの姿がいつもより少しだけマシに見える。
はじめ支度を張り切ってたのはメグだけど、やがてエリィが見かねたように口と手を出してきた。
どうやら彼女の美意識はすごく高いらしくて、魔法のように様々な知識とテクニックを駆使してくる。
普段から熱心に勉強したり研究しているんだろう。
(オシャレってわからないけど……きっと見てほしい人がいるからなんだろうな)
あたしの頭に、ぱっと浮かんだのが……なぜかヴァイスさん。ハッとして、ぶんぶんと頭を横に振った。
(ダメダメ、ヴァイスさんが好きなのはメローネさんなんだから…この間もお見舞いに来てたし…あたしのお見舞いより嬉しかったはず。うぬぼれない!)