龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
アイボリーの柔らかい印象の室内は広いけど、シンプルな家具と調度品。よくある肖像画や美術品が飾られてない。女性らしい暖かな印象を持つお部屋だった。
「あたしに王妃なんて分不相応ですけど……泊まらせていただくなら、すごく貴重な体験でなんだかワクワクしますね」
こんな豪華なお部屋を使わせていただくなら、ネガティブになるよりポジティブになろう。お嬢様とかお姫様とか、あたしには縁遠いけど……。そのつもりになって体験してみよう。
「メグさん、ベスさん、エリィさん。短い間ですが、お世話になります。よろしくお願いしますね。わからないことはよろしくご指導ください」
いつもの習慣でぺこりと頭を下げると、またメグさんに苦笑いされてしまいました。
「アリシア様、あたし達に頭を下げる必要はありません。それから、敬語は結構です。あなた様は女主人同様の御方なのですから」
「そうですわ。わたし達もそのほうが気楽になれます」
ベスさんにまで同じことを言われても…。
「でも、皆さん年上ですよね?」
「確かに、あたしは18、ベスとエリィは17ですけど。それとこれとは話が別です。ちゃんと改めてくださいね?」
メグさんから静かな怒りを感じて、「はい」と返事をするしかなかった。
そして。
「本日はお休みということで、お出掛けのお支度を承っています。では、始めましょうか?」
張り切って腕まくりをしたメグさんに、さらなる恐怖を感じた…。