龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


馬車で初めて街に出た。

目立ちたくないから途中から降りて歩いたけれども、ちょっと後悔する。

ヴァイスさんがカッコよすぎてとにかく目立ってしまう上に、当代唯一の龍騎士ということで有名だからすぐに注目が集まる。

「大丈夫ですか、ヴァイスさん。あたしのわがままで歩かせてすみません。疲れませんか?」
「このくらい平気ですし、アリシアこそ大丈夫ですか?」

ほら、こうしていちいちあたしを気遣ってくれる。

「あたしも大丈夫です」
「ですが、そうですね…少し喉が乾いたので休憩しましょうか」

まだ城下町の入口付近だけど近くに手頃なティーハウスがあり、ヴァイスさんの提案でガーデンテラスのパラソルがある席に腰を下ろす。

「少し待っていてくださいね」
「はい」

ヴァイスさんはそう言ってテーブルから離れる。こう言ったお店のマナーはわからないから、知ったかぶりせず彼に任せることにした。

よく見ると、池がある見事な庭園だ。
5月のよく晴れた日だから日中歩いてきて、少し汗ばんでる。水面を揺らし吹き込む風がひんやりして、火照った肌に心地いい。

「……いたた」

靴のサイズが合わないのか、脱ぐとかかとに靴擦れができていた。

「やっぱり……慣れないことはするものじゃないなあ」

ふう、とため息を落としていると、「失礼いたします」と店員さんがやって来たから慌ててそちらを向くと、トレイに載ったものが次々とテーブルに並べられた。



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