キミとの距離が、縮まらない。

「…黒田さん、さっき大丈夫だった?」


「へ!?」


急に話しかけられたのでびっくりして隣を見ると、原口さんが衣装用の布をハサミで切りながら、こっそり話し掛けてくれた。


「松本さん、長谷川くんと一緒に企画委員やってる黒田さんが羨ましいんじゃないかな。係決める時には人に振っておいて、ホント勝手だよね。あんまり気にしないほうがいーよ。」


「う、うん…。ありがとう。」


「よかったよ、長谷川くんがビシッと言ってくれて。危うく私のこのハサミが猛威を振るうところだったわ。」


そう言って、原口さんが持っていたハサミをかざしてキラリと光らせて見せた。


「う、うん…。ハサミの出番がなくて、よかったです。」


そう言うと、私達はお互いに目を合わせ、クスクスと笑いあった。


――よかった。ちゃんと見ててくれてる人もいるんだ。

味方なんて誰もいないと思ってた。でも、違った。

存在感の強い人に流される人ばかり、いるワケじゃないんだね。

原口さんの存在に救われたものの、心の中のモヤモヤは晴れないままだった。

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