カマイユ~再会で彩る、初恋

「それと」

ダークブラウンの本革の台紙に綴られたものを彼女の手元へ。

「先月完成した高輪のマンションが新居にベストかと思って」
「……はい?」
「ここだと羽田まで乗り換えしないとならないし、俺の作品がたくさんあって片付けるのも面倒だろ」
「……」
「だから、品川駅から歩いてすぐのレジデンスマンションを買ったというか、買おうというか……?」
「……」
「茜の名義にして貰ってあるから、サインと実印だけして貰えれば」
「………意味わかんないです!!」
「ワンフロアじゃ足りないか?丸々一棟がいいなら、浜松町に今建ててるのがあるんだけど」
「……」
「あと三か月くらいかかるらしい。品川より数駅遠くなるけど小一時間だし、乗り換えなしで出勤できるから別にそれでもいいぞ」
「……先生、救急車呼んでいいですか?」

まっ、反応は予想通り。
すんなりと受け取るとは思ってないよ。

だけど、他の男にできないことを俺が全部してやりたい。

今まで誰かに何かをしてあげたいだなんて、一瞬でも考えたことない。
他人と時間を共有したいとも思わなかったし、残るものを一つとして作りたくなかった。

俺をこんな想いにさせたのは茜、……お前だよ。

「それと、もう一つ貰って欲しいものがあるんだけど」
「……先生っ、本当にもう何も要りませんから!」
「そう言わずに」

プロポーズする時は、三種の神器みたいに三点セットで贈ろうと思っていた。
一つ目は、ガラスの靴。
二つ目は、彼女のための家。
そして、三つ目は……。

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