魔法の使えない不良品伯爵令嬢、魔導公爵に溺愛される

それから

 会場に入ると、何時の間に戻ってきたのかエドワースの姿があった。その横にはイザークとディシアドと、意外な人物の姿があった。
「……フレン?」
 何故か、フレンの姿があったのだ。



 その後は大変だった。
 セシリアスタがレティシアとの婚約を発表し、何人もの人がレティシアに挨拶へと来た。魔法が使えない『不良品』なのに、皆どの人も優しく接してくれて、レティシアは戸惑いが隠せなかった。その中には、グスタット領を治めるマーキス伯爵の姿もあったが、婚約取り消しの話も特に切りだされず、寧ろお祝いすらしてくれた。

 また、オズワルト伯爵の口から、クォーク領の当主の交代も告げられた。スルグは違法魔道具である魔香炉を密輸し、この会場で使用したらしい。また、セシリアスタの婚約者であるレティシアを誘拐、監禁した罪にも問われるとのことだった。そして……次期当主に名を上げられたのが、フレン・ヴォークだった。
「たまたまアカデミー帰りに不審者を発見してね……そしたら密輸犯だったんだ。誰の指示か問い詰めたら、伯父さんだって白状して。それをオズワルト伯爵に密告したのが知り合ったきっかけなんだ」
「だからこのパーティー会場で白状させようと思っていたんだが……まさかこの会場で使うとは思ってもみなかったよ……」
 ディシアドは、「自分の管理問題だ」と自信を責める。そんなディシアドに、レティシアは頭を振った。
「そんなことありませんっ。寧ろ父が愚かなことを行ったのが悪いのですから……」
 そう言って俯くレティシアを、セシリアスタはそっと引き寄せた。セシリアスタの気遣いに、レティシアは小さく微笑みを浮かべた。
「今回の功労者はエドだったね」
 イザークに言われ、エドワースは照れ隠しに頭を掻いた。
「いや、ただ単に匂いが受け付けられなくてよ……魔法で防いだだけだったんだがな」
「でも、これで解毒の方法も調べられる。今度こそ、こんなものに引っかからん」
 セシリアスタの表情に首を傾げながら、レティシアは家族の今後が気になった。罪人になってしまった以上、もう、会うことは出来ない。
「君のご両親については罪を償って貰う。妹さんはどうなるか、今後の調査次第だね」
「はい……」
 イザークの言葉に、スフィアを思い浮かべる。あんなに豹変してしまった妹に、もう会うことは出来ないだろう。いや、スフィア自身がそれを拒むだろう。レティシアは悲しさに目を伏せ、セシリアスタに体を寄せた。
「今はまだ学生だから、クラリックに任せておこうと思う。クラリックは伯父さんの補佐をやっていたし、休みには必ず僕も行くことにするから」
「……ありがとう、フレン」
 礼を言うレティシアに、フレンは笑みを返した。フレンには兄がいる。フレンの実家は兄が引き継ぐ予定になっていたので、クォーク領も大丈夫だろう。レティシアはホッと安堵の息を吐いた。
「レティシア嬢」
「はい」
 イザークに引き止められ、レティシアは振り替える。
「君のこれからに、幸多からんことを願っているよ」
「ありがとうございます、イザークさん」
 そんな二人を見ながら、セシリアスタとエドワースは小声で話す。
「……いいのか? レティシア嬢にイザークのこと話さなくて」
「それはあいつが決めることだ。今の関係というのがあいつにとって良いのだろう」
「……なら、いっか~」
 呑気にそう話す二人であった。そんな長閑なパーティーは、夕刻まで続いたのであった。
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