再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
何事かと思い顔を上げると、パスタが巻いてあるフォークを持った蒼汰さんがニコニコ笑顔で私を見ている。


「莉乃、あーんして」

「えぇっ!?」


まさかの提案につい大きな声を出してしまった。
慌てて口元を手で押さえる。

いや……さすがにここで「あーん」なんてできないよ。
周りにたくさん人がいるし、恥ずかしすぎる。

別にそんなことしなくても、普通にお皿に分けてシェアしたらいいじゃないの。


「あー、ほら。パスタが落ちる」

「えっ、ちょっと……!」

「あーんして」


もう、もたついている場合ではない。
ドキドキしながらも、ゆっくりと口を開けると和風パスタが口の中に入ってきた。

ふわりと鼻を通り抜ける醤油バターの香り。香り豊かなしめじと、絶妙にマッチしている。
……悔しいけど、パスタは美味しいわ。


「美味しい?」

「はい……美味しいです」

「よかった。今度は莉乃の番」

「えっ……!?」


もしかして、今度は私が蒼汰さんに「あーん」ってするの?

なんかもう、恥ずかしくてさっきから顔が熱いんだけど。
いい歳したカップルが人前で食べさせ合いっこしてるなんて……周りはどう思っているのだろか。


「俺もウニ食べたい」

「……お皿に置きます」

「ダメ。俺と同じようにして」
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