再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
足を引っかけないようにゆっくりと椅子から立ち上がり、ドレスサロンで教えてもらった歩き方で、ドレスを持ち上げながら控室を出た。

控室すぐ横のトイレの入り口に立って耳を澄ませてみるけれど、蒼斗の声が聞こえない。
蒼斗どころか、プランナーさんの声もしない。

……え? なんで?
トイレって言っていたのに。

とりあえず探さないと、式が始まってしまう。
重いドレスを持ち上げ、慣れない足取りでチャペルまでの道のりを歩き進める。

チャペルの扉が見えたところで、なにやら子どもが誰かと会話をしているのが聞こえ、とりあえず耳を澄ませてみた。


「……ママがね、とってもきれいでかわいかったんだよ」


よかった……。この声は、間違いなく蒼斗だ。

そして、蒼斗と話をしているのは、どうやら男性。
プランナーさんは女性だし、いったい誰なんだろう。

確認しようと、少しだけ身体を前のめりにしてみる。


「あっ……!」


蒼汰さんだ。トイレが終ってから、蒼斗が蒼汰さんを見つけたのかも。
でもよかった。知らない人と話をしているわけじゃなくて。

とりあえず安心したところで蒼斗に声を掛けようとしたとき、2人の会話が耳に入った。


「ママは、あおとけっこんするの?」

「違うよ。パパと結婚するんだ。蒼斗には渡せないかな」
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