再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
子どもに言い聞かせているとわかっているのに、なぜか胸がドキドキし始める。


「えぇー。でも、ママはあおのことだいすきっていったもん! あおもママがだいすきだよ」


蒼汰さんの答えに納得いかなかったのか、蒼斗は口を尖らせながら不貞腐れている様子だ。
この話、聞いてて大丈夫なのかな?


「うん。大好きなのは間違いないよ。でも、パパはママの全部が大好きなんだよ」

「……ぜんぶ?」

「そう。怒ったところも、泣いたところも。もちろん、笑った顔も全部」

「そうかぁ。あお、おこったママはいやだからな」


えぇ!? 『怒ったママは嫌』って……。本当に素直だな。


「だろ? だったら、ママは蒼斗には渡せない」

「わかったぁ」


「よしよし、いい子だ」と言いながら、蒼斗の頭を撫でている蒼汰さん。

蒼斗が納得するように説明している彼は、さすが医者だ。
普段、老若男女問わず病状を説明しているだけあって、こういうことは得意なのだろう。

私には、とてもできない。


「話がまとまったところで……盗み聞きしてる奴は誰だ?」


いきなり私の方へ向かってそう言われ、ぎくりと肩が揺れ動いた。

……バレてた?
いやでも。トイレに行った蒼斗を探しに行っただけで、盗み聞きするつもりはなかったんだけどな。
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