再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
確かに1ヶ月もあれば、退職の手続きはできると思う。
それにしても……高森先輩ってこんな強引な感じの人だとは思わなかった。


「決まり。とりあえず引っ越しを済ませて、落ち着いたら入籍しよう」


私の言い分になんて聞く耳を持たない。といった感じで、高森先輩は着々と話を進めていく。

こんなにあっけなく結婚が決まってしまって、戸惑いを隠せない。


「高森先輩……あの、仕事……だけは」


『辞めたくない』という言葉が、なかなか出てきてくれない。

ーー今の仕事が好き。
No.1になったときのあの喜びも、めぐみさんに妬まれたことも。

全部ぜんぶ、この結婚を機になくなってしまうのかと思うと、悲しくなる。
No.1になることも、簡単じゃなかった。

人と話すことが苦手で、前の職場でも自分の意見は極力発言しないようにしていたこの私が。

この仕事を始めて、変われた。
自分でも驚くくらいに、人と話せるようになっていた。だから……。


「西野。お金に苦労はさせない。仕事は、ゆっくり考えたらいい」

「……はい」


やっぱりダメだった。
そりゃそうか……だって近い未来、あの高森医院の後を継ぐ彼なんだもの。

忙しい彼のサポート役に回って、彼を支えていかなければならない。
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