再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
数ヶ月前に突然再開して、言われるがままにすることになってしまったこの政略結婚。
いわば交際0日で結婚してしまったようなもので、これから私たちの関係を築いていくことになるのだ。

でも、できる限りのことは頑張りたい。
どんな結婚生活が待ち受けているかはわからないけれど、将来的に離婚することになることは間違いないのだから。

そんなことを考えていると胸がチクリと痛んだ気もしたが、「莉乃」と蒼汰さんに名前を呼ばれて我に返った。


「ちょっと、寄り道しないか?」

「え? 寄り道?」

「というより、ランチ? お店を予約してあるんだ」


私を助手席に乗せながら、少しだけ恥ずかしそうにそう言ってくれた蒼汰さん。自分も運転席側に乗り込むと、エンジンをかけてゆっくりと車を発進させた。

それにしても……お店を予約? そんな話、初めて聞いた。
私が知らない間に、ランチの予約をしてくれていたなんて。


「今日は記念日だろ? フレンチ、どうかと思って」

「え!? フレンチ?」

「ダメだった?」

「いえ……ダメっていうか。そんな贅沢な……」


信じられない。蒼汰さんが、まさかそんな風に思ってくれていたなんて。

政略結婚なのに……。今日を『記念日』だと言ってくれるなんて。
聞き間違いではないだろうか。
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