利瀬くんの甘さに溺れたら
ここはそのまま利瀬くんから詳細を聞く流れだと思っていたのに、またもや何も知らない様子の利瀬くん。
「き、聞いてない…?私も細かいことは聞いてないから何とも言えないけど…」
「……全く聞いてない。今、桜井さんに確認とってこようか?」
「う、ううん…。大丈夫、だと思う…。何もないなら、それに越したことはないし…」
とか言っている私も、内心心臓がドクドクと嫌な音を立てている。
…杏奈ちゃんの行動と発言の意図が、まるでわからない。
杏奈ちゃんは一体、ここに何をしに来たのか…。
考えられる理由はただ一つ。
「杏奈ちゃん、何か言ってた…?その、利瀬くんに…」
「……あ。そういえば、文化祭を一緒に回らないかって誘われてた気がする」
頭を鈍器で殴られたような鈍い痛みが走る。
実際に殴られているわけではないけれど、それくらいの衝撃が私を襲った。
っ…先、越されちゃったな…。
…やっぱり、杏奈ちゃんがここに来たのはそういうことだったんだ。
利瀬くんと文化祭を回るために、利瀬くんが一人になるのを見計らっていたのかもしれない。