利瀬くんの甘さに溺れたら
「っわ!?り、利瀬くんっ…!」
誰かと思えば、大量の衣装を抱えた利瀬くんだった。
顔が見えないくらいにたくさん持っているのに、よく私だってわかったな…。
「ほら、行こ。みんなに置いてかれるよ」
「え、うそ!?ごめん杏奈ちゃん、私行くね!」
置いてかれると真面目に言われ、思考をすぐに切り替える。
杏奈ちゃんに謝ってから去ろうと振り返った時、それは聞こえた。
「へ、平気だよ…!えっと…り、利瀬くんも頑張ってね!」
杏奈ちゃんの、いつもより大きめな声援。
他の誰でもない、利瀬くんに向けられたもので。
「っ…」
利瀬くんには聞こえていなかったのか、私が着いてきているのを確認すると、そのまま足を止めることなく被服室へと向かった。
私の胸のざわめきだけが、嫌なくらいにうるさかった。
*
「あ、佐藤さんと利瀬くんおつかれ〜。もう運び終わったから、あとは好きにしてていいよ」
「え、そうなの?」
利瀬くんと被服室に入ったら、同じ衣装係の子に役目が終了したと告げられびっくり。
よく見ると、机の上には積もりに積もった衣装が。