利瀬くんの甘さに溺れたら

「っわ!?り、利瀬くんっ…!」



誰かと思えば、大量の衣装を抱えた利瀬くんだった。



顔が見えないくらいにたくさん持っているのに、よく私だってわかったな…。



「ほら、行こ。みんなに置いてかれるよ」



「え、うそ!?ごめん杏奈ちゃん、私行くね!」



置いてかれると真面目に言われ、思考をすぐに切り替える。



杏奈ちゃんに謝ってから去ろうと振り返った時、それは聞こえた。



「へ、平気だよ…!えっと…り、利瀬くんも頑張ってね!」



杏奈ちゃんの、いつもより大きめな声援。



他の誰でもない、利瀬くんに向けられたもので。



「っ…」



利瀬くんには聞こえていなかったのか、私が着いてきているのを確認すると、そのまま足を止めることなく被服室へと向かった。



私の胸のざわめきだけが、嫌なくらいにうるさかった。







「あ、佐藤さんと利瀬くんおつかれ〜。もう運び終わったから、あとは好きにしてていいよ」



「え、そうなの?」



利瀬くんと被服室に入ったら、同じ衣装係の子に役目が終了したと告げられびっくり。



よく見ると、机の上には積もりに積もった衣装が。
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