利瀬くんの甘さに溺れたら
好きな人が目の前で告白されて、告白してきた相手の手を取って歩こうとしている。
その手はさっき、私が繋いでいた手で。
…っ最低だ、私…。
友達が泣いているのに、こんな汚いことばかり考えて一歩も動けない。
助けることは愚か、杏奈ちゃんとどこかへ行こうとする利瀬くんを引き止めたい衝動に駆られる。
「行かないで」って、「私を選んで」って…自分のことしか考えていない、自己中な考えばかりが頭に浮かんで、自分がどんどん嫌な子になっていく。
っ…もう、無理だっ…。
これ以上は耐えられない。
そう思って目を伏せた瞬間、強引に右手が握られた。
「ごめん、桜井さん。俺は…桜井さんとは付き合えない。だから…あとは友達に任せるね」
「「え…っ?」」
素っ頓狂な声を上げる杏奈ちゃんと同じように、私も驚いて利瀬くんの方を見る。
「えっと…杏奈がごめんね?あとはこっちに任せて」
すると、いつも杏奈ちゃんとよくいるクラスメイトの高澤さんが申し訳なさそうに現れた。
「…あとは高澤さんに任せよう。話があるんでしょ?」
「あ…う、うん…」