利瀬くんの甘さに溺れたら
何が何だかわからない私の手を引いた利瀬くんは、そのまま人ごみを掻き分けてどんどん進んでいく。
こ…この状況は一体……?
何も話してくれない利瀬くんに連れてこられたのは、なんと屋外。
ひんやり冷たい秋風が頬を撫で、髪の毛がふわりと舞った。
少し肌寒さを感じるけれど、繋がれた右手だけが暖かくて。
「……この間、桜井さんに文化祭を一緒に回って欲しいって言われたって行ったよね」
唐突に出てきた彼女の名前が、余計冷たく心に刺さった。
「っ、言ってた…けど」
それがどうしたって言うの…?
「本当は……告白もされたんだ」
胸が、痛い。
「…でも、傷ついて欲しくなかった。だから…ちゃんと断れなかったんだ。それが一番、桜井さんを傷つけることだってわかってたのに」
何かの病気になったんじゃないかと思うほどに胸が苦しくて、潰れてしまいそう。
「…でも、瑠々に聞かれたとき、そのことを正直に話せなかったのは理由があるんだ。…それはね、」
っやだ、聞きたくない…っ。
怖くて、その場でぎゅっと目を瞑った。