利瀬くんの甘さに溺れたら

「ごめっ…気に、しないで…っ」



ただでさえ今は衣装を作りで忙しいというのに、こんな時に泣くなんて…最悪だ。



自分の身勝手さで、自己嫌悪思想に陥りそうになった時。



「…佐藤さんが泣いてるのに、気にしないわけないでしょ」



「…っ!」



優しく、壊れ物を扱うかのようにふわりと抱きしめられた。



突然のことに驚いて、思わず涙が引っ込む。




背中に腕を回され、利瀬くんに耳元で囁かれる。



「っ、り、利瀬く…」



「…何があったのかとかは聞かないけどさ。辛いなら、辛いって言いなよ」



っ…なに、これ……胸が、苦しいよ。



胸の奥が痛いくらいに締め付けられて、ドキドキうるさい。



利瀬くんに聞こえちゃうんじゃないかと思ったら、顔がぶわっと熱くなる。



顔を見られなくて良かったと思うけれど…利瀬くんが、今どんな表情をしているのかわからないから。



「俺がぜんぶ、受け止めてあげる」



「っ…!!」



熱の篭った利瀬くんの声が甘く感じて、勘違いしちゃいそう。



「…っだ、大丈夫だよ。だから、その…」
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