利瀬くんの甘さに溺れたら

早く利瀬くんの腕から脱出しないと、本当に危ない気がした。



だって、このまま利瀬くんのこと…。



「…ほんと?」



そこまで考えて、利瀬くんを見上げるように顔を上げた。



心配そうにこちらを覗く利瀬くんが、私をじぃっと見つめている。




っ…違う、利瀬くんはただ、私を心配してくれただけ。



何を勝手に意識しちゃってるんだろう。



「ほ…ほんとだよ…っ!嘘じゃないです!」



利瀬くんは友達。



それ以上でも、以下でもない。



「…なら、いいけど」



「…へへ。ありがとう、利瀬くん」



だから、何も無かったみたいに笑うの。



利瀬くんは変なことを常にする不思議くん。



きっとこれも、全て彼の気まぐれ。



好きな人に振られた友人を可哀想に思って、慰めてくれただけに過ぎない。



「…さーて、作業進めよっと!」



「…うん。進めよう」



こんな短期間で失恋したくないから、芽生えそうになった気持ちに自ら蓋をして、見て見ぬふりをした。



放課後の教室に二人きり。



利瀬くんに抱きしめられたあの感覚が、どうしても消えてくれなかった。
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