とどまることをしらないで。
……そんなの、わたしだって。
律くんに人がたくさん集まる度に、やきもち、妬いてた。
わたし、この前までこんな人だったっけ。
いつの間にか黒いどろどろとした感情が渦巻いていて、暴走してしまいそうになる。
それはぜんぶ、律くんのことが好きだから。
好きだから、とめられなくて、欲しがって。
さっき食べたクレープみたいに、甘くて。
足りなくなるの。
「ーー……あのね、律くん、」
気づいた時には、もう律くんの制服の袖を引いた後だった。
高鳴っている鼓動は、さっきとは比べものにならないくらいの速さで。
思わず、緊張して少し瞳に透明の膜が張られる。
ーー…律くん知ってる?
この学校の後夜祭って、ジンクスがあるんだって。
メイドとして働いていたときに、ちらりとお客さんから耳にした言葉。
「花火が打ち上げられている時にキスしたふたりは、ずっと一緒にいられる」
そんな、まるで夢みたいな噂。
律くんは、知らないかもしれない。信じないかもしれない。
でもわたしは、そんなジンクスを信じていたい。
ーーだから。
「ーー…キス、してほしい」