この恋の化学反応式
「きれい、、」

先生に連れていかれたのは街一帯が見渡せる景色が綺麗な場所だった。
街の灯りがイルミネーションのようだ。

「だろ?昔見つけたんだ」

先生は得意げにそう言う。

「こんなとこ初めて来ました。ていうか先生もこの街に住んでたんですね。それも昔から」

「まあ、そうだな。でもこの場所を教えたのは有川だけだよ」

「ほんとですか?」

嬉しさに顔が赤くなる。
誤魔化そうとパタパタ顔を仰いでいると、大きな赤い花火が打ち上がった。

「「リチウム!」」

私たちの声が重なる。

そして、顔を見合わせて笑い合った。

「まさかこんな言葉で合うなんて、、」

「俺もびっくりだよ。花火大会始まったんだな、、」

花火を見上げる先生の横顔をそっと盗み見る。

(先生、横顔綺麗だな)

ずっと見ていたのがバレたのか先生がこちらを見て笑う。

「なんだよ」

その無邪気な笑顔を見て私は思わず

「、、好き」

そう呟いてしまった。そしてそんな自分にびっくりした。

「ん?なんか言ったか?」

幸い花火の音でかき消されていたようだ。

ずっと見て見ぬふりしてた私の気持ち。

「“まだ”、言えません」

「何だよ、悪口か?」

拗ねたような顔をする先生に、花火を指指して微笑んだ。

「やっぱり綺麗ですね。来年もまた見たいなぁ」

「そうだな。受験成功したらまた連れて来てやるよ」

それから私たちは、最後の1発まで2人で並んで花火を眺めていた。

待っててね先生。いつか花火にかき消されないような大きな声で言うから、、。
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