この恋の化学反応式
化学のテストの時間になり、私は問題用紙が配られる間先生のことを思い出していた。

『覚えるだけじゃなくて、思い出す練習もきちんとしないと駄目だぞ』

先生のその言葉の通りに、必死に知識を詰め込むだけじゃなくて、何度も何度も問題を解いてきた。

今の私なら大丈夫。そう自分に言い聞かせる。

先生への感謝を、私は結果で伝えたい。

「試験を開始してください」

大問1の問いを見て、思わずシャーペンを持つ手に力が入った。

(炎色反応、、)

先生と見たあの日の花火を思い出す。

花火大会のあと、炎色反応の問題を数問解いたからか、難なく解くことが出来た。

(ここが全問正解だったら、絶対先生笑うよね、、)

あの時の先生の顔を思い出して、試験中なのに思わず口が緩んでしまう。

(早く先生に会いたい。先生に褒めて欲しい。それから、、)


試験官の先生の終了の声が聞こえ、私はシャーペンを置いた。

もちろん完璧というわけではないけれど、どの教科もとても手応えがある。

試験後すぐに配られた模範解答と試験中にメモした自分の解答を見比べ、誰よりも速く自己採点を始めた。

(やった、ここ合ってる、、、。自力で解けたの初めてだ)

自己採点中、合っている問題を見つける度、先生の笑顔が頭に浮かんだ。
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