手のひらに小さなハートを

ハートを背負って

 頼まれたクマのマスコットは友達に渡すととても喜んでくれた。そして手元にはもう一つ、友達にあげた物とは違うクマが残っている。

 あれ以来、航介のことが妙に気になっていた。

 通りすがりに教室の窓から見える、航介の笑ってる顔や真剣そうな顔、眠そうな顔も不思議と全部がときめいて見えた。

 多分、この気持ちは『恋』なんだ、と自分でも気づいていた。

 あの日以来、指先に感じた熱が忘れられなくて……。

 けれど航介のために作ったクマは、渡すタイミングが掴めずずっと鞄の中にしまい込んでいる。

 気楽に友達にあげるように渡せばいいのに、それが出来ない。
 考えれば考えるほど身動きできなくて諦めて帰る……という日々が続いてた。

 今日も何もできず、ため息を漏らしながら下駄箱に向かうと背中を向けて立っている航介を見つけた。

 その後ろ姿を見てドキッと心臓が暴れだす。
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