内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
こちらから婚約破棄をして、彼女を自由にさせてやるべきなのだろうか。
いや、できない。今さら真智を手放すなんて、そんなこと……。
ぐちゃぐちゃに乱れた感情のまま、石狩さんの待つ席へと戻る。なにげなく俺を一瞥した彼は、一度カウンターに戻した視線を再度俺に向けた。
「おい、大丈夫か降矢。目が充血してるぞ。そんなに飲みすぎたっけか……?」
「すみません、先に帰らせてもらおうかと」
「ああ、それは構わないが……さっき俺が変なこと言ったせいなら申し訳ない。会計は気にすんな。お前、大して飲み食いしてないし」
「石狩さんのせいではありませんよ。お気遣いありがとうございます。誘っていただいて嬉しかったです。では」
うまく笑えた自信はないが、精一杯の微笑を浮かべて石狩さんに頭を下げた。
店を出て、酔いを覚ますために自宅とは別方向へとあてもなく足を進める。
十二月を迎えた街はどこもかしこもイルミネーションの明かりが灯っていて、目にも鮮やかだ。
ついさっき、真智の本心を聞くことがなければ、クリスマスは彼女と楽しく過ごしたかったと思う。
真智が盛大に恐縮するであろう高価なディナーを予約して、プレゼントをいくつも用意して……。