内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
ドクン、と鼓動が重い音を立てた。……たぶん、気のせいではない。
角の向こうにいるのは、真智とあの男だ。まさか、同じ店で飲んでいたなんて。
しかし、今の質問はいったいどういう意図で……?
ふたりの会話が気になり、足音を殺して角の方へ近づいていく途中。
「後悔……するかも、しれないね」
ぽつりと、真智の気弱な声がした。
聞き逃してしまいそうなほど微かな声だったのに、彼女の声ならきちんと拾う自分勝手な聴覚を恨めしく思う。
真智は、俺と結婚したら後悔するかもしれないと……そう思っているのだ。
石狩さんとの会話や酒のおかげでさっきまで心地よく温まっていた心が、急速に温度を失っていく。
「でも、しょうがないよ。自分で選んだことだもん」
続けて、やけに明るい声でそう言った真智。
俺はいたたまれなくなり、静かにその場を離れた。
自立した関係を築こうと言いながら、その約束を破って束縛しようとしたり、強引なキスをしたりする俺に、真智も愛想がつきかけているのだろうか。
発言の内容にも傷ついたが、それをあの同期の男の前で吐き出していたことに嫉妬心が溢れる。