内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

『確かにな。社内ですれ違った時に俺がひと目惚れして、猛アプローチしたというのはどうだ?』
「あり得ませんよ、私の顔にひと目惚れなんて」

 彼の作り話には説得力がまるでなく、ため息しか出ない。

 だからといって、地味で引っ込み思案な私からアプローチしたという物語も現実味に欠ける。大勢を納得させる嘘をつくのって、結構難しいんだな。

『そうか? 自然体であまり飾り気がないせいか、きみは肌や髪がとても美しいし、テスト中に見せた真剣な眼差しには人を惹きつけるものがあった。客観的に見て、十分に魅力を兼ね備えた女性だと俺は考えているが』

 そんなに容姿をほめちぎられるのは初めてで、息が止まるかと思った。

 細かい設定を考えるのが面倒になって適当なことを言っている? それとも偽装結婚に同意したお礼のリップサービス?

 あれこれ理由をこじつけてみるが、過剰に高鳴る心臓はなかなか大人しくならない。

「そ……っ、そんなこと、初めて言われました」
『きみが勉強や仕事に熱心すぎるから、誰も付け入る隙がなかっただけじゃないのか?』
「いやいや、単に敬遠されていただけかと」
『どちらにしろ、ひと目惚れ以外に妙案がないのも事実だろう。俺がうまく周知させておくから、きみもなにか聞かれたら〝専務の方から言い寄ってきた〟と答えればいい』

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