内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

「やめてよぉ、アキ」
「やだ。まえ、みえない」
「うえぇ……アキ、けったぁ」

 前の席に乗っている麦人が盛大に泣き出した。見ると、後ろの席の秋人が短い脚を伸ばして、麦人の背もたれを何度も蹴っている。

「あーきー、やめなさい」
「うしろ、やだ」
「毎日朝と帰りで交代してるんだから、今は秋が後ろの番でしょ?」
「ちがうもん!」

 秋が下唇を前に突き出し、泣き出しそうな顔になる。麦も未だに泣き止んでおらず、ふたり同時に泣かれる恐怖にぎゅっと心臓が縮こまる。

 屋外とはいえ、まだ朝だ。子どもの泣き声に寛容な人ばかりでないので、こんな時どうしてもやきもきしてしまう。

 効果的な声かけに悩み黙り込んでいると、楓人が遠慮がちに「ママ」と言った。

「きんようびのかえりも、アキ、うしろだった」
「えっ……?」
「ぼく、おぼえてる。ムギがころんでけがしたから、アキ、うしろでがまんしてた」

 忙しい日々を過ごしていると先週金曜日の記憶すら遠い彼方だが、なんとか記憶を辿る。

< 9 / 247 >

この作品をシェア

pagetop