初恋は苦い思い出。でも出会うべく人と出会いました
 ジルベルト様が私の肩を抱き寄せた。ジルベルト様の匂いがする。落ち着くまでジルベルト様の胸を借りてよ……

「本当にキレイ……ぐずっ」

「ほらジュース飲む? 落ち着くよ」
「うん」

「初めての割には上手くいっているようだね。改善点もありそうだけど、それはそれで楽しみでもあるよね」
「うん。これを見せたかったから早く来ちゃダメだったの?」
「うーん、それもあるけど、今回はちゃんとご家族を招きたかったというのも大きいな。もちろんこれから毎年来てくれたら屋敷の皆も喜ぶから遠慮はしないでほしい。母が亡くなってから人を招くのを躊躇っていたんだ。でもオフィーリアの家族を招待する。と父が言った時に屋敷の皆のヤル気が上がってさ、オフィーリアを紹介した時もみんな喜んでくれたし、こんなに明るい屋敷の雰囲気は久しぶりだ」

 ジルベルト様はこうやって亡くなったお母様のお話をしてくれる。懐かしそうにゆっくりと思い出すように。それがなんだか嬉しい。

「明日も楽しみだね」
「まつりの前に連れて行きたいところがあるんだ」

 手を出されて立ち上がる。そろそろ灯りを消す時間なんだって。

「うん、どこに連れて行ってくれるの?」
「明日になると分かるよ。朝一で出掛けよう……オフィーリア帰ったらすぐに部屋に戻って目を冷そうか……」

 目元が熱いのは感じていたけど、そんなに腫れているの!? 見ないで……恥ずかしいから。フローリア様達と合流しても顔を下に向けていた。暗いから分からないと思うけれど、屋敷に戻ると直ぐに部屋へ行った。そして冷たく冷やしたタオルと温かいタオルを交互で目元を抑える。明日までになんとかなるでしょ……

 それにしてもキレイだったし嬉しかったなぁ……浸る間も無く湯浴みを済ませベッドに入る。明日は早いものね。

 ちゅんちゅん……と小鳥の鳴き声で目を覚ました。まだ早い時間で約束まで一時間ある。何着て行こうかな。町娘風の服装ではなく貴族のお忍び風のワンピースに着替えた。早い時間からメイドを呼ぶのも忍びないから簡単に着られる服にした。髪の毛は櫛でといてそのまま。

 準備が終わった頃にメイドが起こしに来た。

「お嬢様、随分早いですね! 一人で起きられるなんて偉いですわ!」
「やれば出来るのよ! えへん」

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