初恋は苦い思い出。でも出会うべく人と出会いました
 薬も飲まなくて良くなったし、夜も咳き込む事なく眠れる様になった。先生の怪しいお茶の影響もあるかもしれないな……姉様や母様にも何かしらのお茶を作っていたし、研究者とは器用なものだ。

 先生は勉強を教えるために雇われた筈なのに最近は遊び相手になりつつある。兄ができた様なそんな感じだ。王都と領地を行き来し忙しくも楽しそうにしている。先生のおかげで儲けも出ているし、父様は自由にさせている。っていや自由にしすぎだろ……


「アンドリュー、おまえしか頼りになるものはいないんだ、うちの事頼んだぞー」

 ある日父が言った。姉様の婚約が決まった。ぼんやりした姉にまともな人との縁談が纏まって良かった。と思った。しかも姉様がステキな町だと連呼するロワール領の嫡男ジルベルト殿。


 ジルベルト義兄に交流を深めよう。と言われ話をしていると、拗らせ系で執着系だと思った。しかし姉様のことを一途に好きだったらしいから“返品不可”とだけ言っておいた。


 どうやらロワール領は綺麗なだけでなく騎士の集まる町だと聞き、そりゃ安心だ。と思った。うちの領地とも近いし街道は整備が整い出したから今まで半日掛かっていた時間は短縮されるだろう。何かあったらすぐに帰って来られる距離だ。


 僕が学園に入る年になった。入学準備をするために町へ行き屋敷へ戻ると、ジルベルト義兄とルシアン様がいた。

「どうしたんです? 珍しいですね二人揃って」

 フローリア様はいない様だ。

「アンドリューは今年から学園に入るから面倒なことに巻き込まれない様に話をしにきた」

 ん? わざわざ?

「それはどうも?」

 なんの話だろう。

「アンドリュー、よく聞けよ?」

 ルシアン様は侯爵家の嫡男だから、面倒事の回避でも教えてくれるのか?

「はい」

「オフィーリアは癒し系令嬢と言われ人気がある。フローリアや僕と親くしているから虐めなどに遭わなかった。それにAクラスにはそんな卑怯な真似をするものは存在しない。恥だからな」

 Aクラスに入るのは名誉な事だから虐めなんてする様な者は相応しくない。

「……なるほど。二年生ではAクラスに入れということですね」

「それもあるがアンドリューは男だから自分の身は自分で守れ。先生は今領地に籠っているんだろ? 剣術の相手はいるのか? 僕が稽古をつけてやる」

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