旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 家に帰ると母はすでに帰宅していて、夕飯の準備をしていた。

「お母さん。聡一さん、めちゃくちゃいい人だった」
「ふふっ、そうね。本当にいい人だったわね」
「ねぇ、このお見合いって進められるの?」

 美咲がそう言うと母は大層驚いた顔をしていた。美咲がこういうものに奥手であることを母は知っているのだ。まさか美咲が自分から望んでここまで進めようとするとは思わなかったのだろう。

「……驚いた。あんた進めたいの?」
「うん。もう半分好きになっちゃったかも」
「あらあら……じゃあ、こちらからはOKのお返事するわよ?」
「うん。お願い」
「わかったわ。でも、進められるかは、向こうのお返事にもよるから、絶対ってわけではないわよ?」

 お見合いなんだからそれは当然だ。美咲だってわかっている。ここで自分が選ばれる可能性が高くはないことも。

「わかってる。あんな素敵な人が私を選ぶなんて、そんなの奇跡だと思うし」
「そこまで卑屈にはならなくてもいいと思うけれど」
「だって、どう考えても月とすっぽんじゃん」

 別に自分を必要以上に卑下するつもりはない。それでもあの人物と並べば自分が霞んでしまうことくらい、美咲は十分わかっていた。

「あら、美咲も十分かわいいでしょう?」
「それは親の欲目」
「そんなことないわよ。美咲には美咲のいいところがあるんだから。まあ、こういうのはご縁だし、縁があれば上手くいくと思って気楽に待ってなさい」
「うん、ありがとう」

 母の言葉に励まされ、心を落ち着けて待っていよう、そう思ったのも束の間、なんと十分後にその結果が来てしまった。
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