旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「私、プロポーズする」
「は?」
「結婚一周年の記念日に聡一さんにプロポーズする。好きですって、これからも一緒にいてほしいって伝える。絶対にやり遂げたいからここで宣言しておく」

 千佳に宣言することでもないのだが、ずっと見守ってくれていた彼女に告げておきたかった。そして、千佳にわかってもらうことで、ちょっとだけ背中を押してほしかった。

「え、本気?」
「本気! それに今考えたってわけでもなくて、徐々にそうしたい気持ちが強くなってたんだよ。だから勢いってわけじゃないよ。したくてするの」
「美咲……あんた本当に頑張ってるんだね。よし、わかった! そこまで言うなら私も応援する! 協力できることあったら何でもするから言って?」

 美咲は千佳の手を握りしめて、感謝をあらわにした。彼女なら美咲の決意を後押ししてくれると思っていたが、実際にされるととてつもない勇気が湧いてくる。

「ありがとう、千佳ー!」
「全然。あ、でも、ごめん。私来週から一ヶ月出張でいないや。でも、いつでも電話してくれていいから」
「え、一ヶ月もいないの?」
「うん。言うの遅くてごめんね? 急遽後輩の代わりに行くことになって」
「そっかー……千佳に会えないのか」
「もう、そんな淋しそうな顔しないでよ。その間旦那さんとたくさんイチャイチャしなよ。あんまり私に構ってても旦那さんが淋しくなるって」
「あー、いや、むしろ心配されるんだよね。家にずっといると」
「え、なんで?」
「無理に家にいるんじゃないかって。ほら、私が結婚してすぐの頃もさ、千佳研修で結構長いこといなかったでしょ? 千佳のほかに頻繁に会う友達っていないからさ、ずっと家で過ごしてたんだけど、そしたら無理して合わせなくていいって言われて。かなり心配されたんだよね」

 本当に美咲がまったく出かけないものだから、聡一に気をつかっているのではないかと心配されたのだ。家にいるほうが好きだとは伝えたが、それでも、友人と会ったり、ときには実家に帰ったり、そういうことを遠慮なくしていいと言われた。

「なるほど。ほんと優しいよね、美咲の旦那って」
「うん、優しい。まあ、だから聡一さんのことは大丈夫なんだけど、実は聡一さんも再来週出張で……だから、千佳に会ってもらおうかと思ってた。ずっと一人は淋しいし」

 ずっと実家暮らしだったのもあって、長く一人で過ごすのは初めてだ。本当は千佳と会って淋しさを紛らわせたかったのだが、いないなら仕方ない。

「えー、そっか。ごめん。帰ってきたらまた会お?」
「うん。帰ってくるの待ってるね。でも、千佳が出張行く前に宣言できてよかった。ちゃんと頑張れそう」
「おー、頑張れ! 本当に何かできることあったら言ってね!」

 美咲はもう一度千佳の手を握って感謝の気持ちを伝えた。もう後には引けない。絶対にやり遂げてみせると美咲は固く誓ったのだった。
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