旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 それから、しばらく自分の想いと向き合った美咲は、自分の決意をしっかり固めようと、頼りになる友人のもとへとやってきた。美咲はこれまでの報告も兼ねつつ、千佳にある想いを宣言しようと思っていた。


「ついにキスした」
「おめでとう!」

 千佳が随分食い気味でそう述べてきた。きっと千佳はこうなることを予想していたのだろう。

「ありがとう。でも、いろいろと予想外なことが起こって、千佳が思ってるよりもちょっとだけ進んでる」
「え? え? どういうこと?」
「あのね、聡一さんが、旅行先で雰囲気に流されるとよくないからって、旅行前にキスしてくれてね」
「マジ!? 旦那が男見せたんだ」
「それで、旅行中はもうちょっとだけ刺激的なのした」
「え、ディーっ」

 美咲は思わず千佳の口を手で塞いで続きの言葉を遮った。そういうことを口にされるとやはり恥ずかしい。

「違う! そこまではしてない!」
「なんだ。ちょっとだけって本当にちょっとだけか」
「いや、結構なやつだったから……」
「ほーん。嬉しかった?」
「当たり前じゃん。なんか千佳が言ってることがわかってしまって」
「何言ったっけ?」
「自然とそういう気持ちになるっていう」

 あのとき、美咲は間違いなく先に進みたいと思っていた。そして、今もその気持ちは消えていない。

「あー。じゃあ、それなりに色っぽいやつしたわけね」
「恥ずかしいから言わないで!」
「もうわかったって。で、好きは言えたの?」

 それは今日美咲が話したかった話題だ。千佳相手でも少し緊張してしまう。

「言えてない……やっぱり言おうとしたらわーってなって言えなくて」
「ありゃ。まあ、私も普段から言うかって言われると言わないしなー」
「そうなの?」
「うん。まあ、付き合いたての頃はそれなりに言ってたとは思うけどね。最近はそういうときにしか基本言わないかな」
「そういうとき?」
「愛の営み」

 美咲が恥ずかしがるから、わざとオブラートに包んでいってくれたのだろう。

「……あー、そういうこと」
「そ。だからそうなれば自然と出てくると思うけどねー」
「でもそれだと遅すぎるかな……」
「そう?」
「千佳」
「うん?」

 美咲は一度ふっと息を吐きだした。そして、今日宣言したかったある決意を口にした。
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