旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「なになに?」
「……抱きしめられたい」
「いい! いいよね。わかるよ、めっちゃわかる! マジでぎゅーされるのいいもんね」

 千佳が食い気味で肯定してきて美咲は驚いた。千佳は余程抱きしめられるのが好きらしい。だが、同意を求められても経験のない美咲にはわからない。ただ想像で幸せそうだなと思うだけなのだ。

「……されたことないから、想像でしかわかんない……」
「あ……ごめん、ごめん。よし、じゃあ、次はぎゅーしてもらお?」

 千佳はしまったという顔をしている。だが、そんな顔をされるとかえってむなしい。美咲は羨ましい気持ちが湧いてきて、やはり自分もされてみたいと強く思った。

「うん……されたい。めっちゃされたい」
「今日は積極的じゃん」
「だって、手繋ぐようになってから、触れたい欲が膨らんでしまって……変態臭い?」

 聡一と手を触れ合わせると、とても満たされた気持ちになる一方で、不思議なことにもっと触れたいという気持ちまで湧いてくるようになった。そして、それは日に日に強さを増している。

「いや、普通でしょ。私だって智くんに触れたいって思うから」

 千佳が同意してくれて美咲はほっとしたが、果たしてそれは聡一にも通じることなのだろうかとそんな不安がよぎってしまう。

「そっか。聡一さんも同じだったらいいのに……」
「同じだよ。触れたくないわけないでしょ。美咲が、抱きしめて? って言えば、絶対抱きしめてくれるって」
「そりゃあ、聡一さんは優しいからお願いすればやってくれるよ……」
「いや、そういう意味じゃないんだけどね……」
「え?」

 いったいどういう意味なのだと問いたかったが、千佳が続けざまに美咲を諭してきた。
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