旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「大丈夫ですか?」

 すぐ真上から優しい声が降ってきた。聡一の表情は見えないが、きっと心配そうな顔をしているのだろう。美咲はそんな心配はしなくていいとすぐに伝えたくて、何度もこくこくと頷いた。

「うん。あなたは本当に愛らしいですね。しばらくこうしていましょう」

 美咲は聡一のその言葉にもう一度頷き、聡一から与えられるぬくもりに酔いしれた。触れているところからじわじわと全身に幸せが広がっていく。そうするともっと聡一の感触を味わいたくなって、美咲はだらんと下げいていた腕を聡一の背にそっと回した。すると腕からも彼のぬくもりが伝わってきて、もっともっと幸せが満ちていく。そうして美咲は気持ちが溢れだして、ぽつりと小さくその名を呼んだのだった。

「聡一さん」
「はい」

 すぐ間近から声が聞こえてくるのが心地いい。それがまた欲しくて、美咲はもう一度意味もなく彼の名を呼んでいた。

「聡一さん」
「はい……美咲さん、とても心地いいですね。こうしてあなたを抱きしめることができて、本当に本当に幸せです」

 聡一が言葉で伝えてくれることが嬉しくてたまらない。彼はいつも真摯に伝えてくれるから、彼の言葉はいつだって信頼できる。聡一が幸せだと言うならそうなのだろう。同じ気持ちでいるのが美咲は嬉しくなって、美咲の想いも彼に伝えたくなった。

「聡一さん。私も……幸せ」

 想いを告げれば、少しだけ美咲を抱きしめる腕に力が入って、美咲の想いが伝わったのがわかる。だから、美咲も彼に回した腕に少しだけ力を込めてみた。
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