敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「社長、だから……!」
「おっと、高垣さん。この件は内緒にしてくれよ。いやまあ、きみなら大丈夫だとわかっているけどね。きみも息子と花嫁の幸せを嬉しく思ってくれるだろう」

社長に満面の笑みを向けられ、私の心はしわくちゃだった。だけど、それはすべて私自身の責任なのだ。

「岩切社長、要さん、おめでとうございます。私もとても嬉しいです」

ぱっと笑顔になれた私はなかなかの役者だ。

「私事なのですが、二月いっぱいで退職を希望しております。残念ですが要さんの凛々しいタキシード姿は拝見できそうにありません。遠くで、岩切製紙の皆さんの幸せを願っております」
「そうだったのか。それは残念だ。ここまで息子を支えてくれてありがとう。きみは本当に優秀な社員だったし、明るく素敵な人だったから、寂しくなるよ」
「もったいないお言葉です。本当にお世話になりました」

要さんは何も言わなかった。ただ、唇をかみしめていた。苦しそうな表情で。


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