敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
どうか、産むことを許してほしい。新しい住居が決まったら出て行くのでそれまで実家を頼りたい。お腹の子の父親については詮索しないでほしい。

急に戻ってきた孫娘の告白に、祖父母は随分驚いていた。
祖父には出産を賛成できないと言われた。必ずしも両親がそろっていなければならないわけではないが、その子を産むのは私のエゴではないかと。
祖父母は出産から間もなく離婚した母を思い出していただろう。母がした苦労も知っている。
私までその苦労を背負うことはないと考えただろう。

それでも私の意志が固いことを知ると、祖父母は受け入れてくれた。
ともにこの家で暮らせばいいと言ってくれたが、それでは祖父母に甘え過ぎだ。
貯金と亡くなった母が残してくれたお金があるので、隣町に近居すると決めた。お互いに助け合える距離だ。
九月に大地を出産した頃は、一時的に実家に世話になったけれど、今は大地とともにアパートで暮らしている。

祖父母と同居を選ばなかったのにはもうひとつ理由がある。要さんの存在だ。
会いに行くと言った要さん。本気じゃないとはわかっていたが、実家にはいられなかった。履歴書に実家の住所はあるし、その気になれば彼はそれを閲覧できるだろう。
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