お飾り側妃になりましたが、ヒマなので王宮内でこっそり働きます! ~なのに、いつのまにか冷徹国王の溺愛に捕まりました~
「そうでしょう? 実は、昨日みたいなことを他の宮殿でも繰り返しているらしいわよ。でも、肝心の陛下は昨夜グレイシア様の部屋には泊まらず、すぐに帰ってしまわれたんですって」
だから、余計にグレイシア様のご機嫌が悪いのよ、と上にはわからないように顔を寄せながらちらりと見上げている。
「へえー」
他でもやっているというのは知らなかった。そして、昨夜ライオネルは一緒に過ごさなかったと知って、オリアナはどこかホッとしたような気持ちになった。
(どうしてかしら。私がライオネル様に対して抱いているのは、そんな感情ではないはずなのに)
不思議な感覚に、オリアナが首を捻った時だった。
「あー、それにしても暑い」
見れば、ぽたぽたとメイジーの額からは汗が流れ続けている。
「せっかくのかわいい顔が台無しよ?」
本当に暑いのだろう。少しだけ手の先で風を起こしてメイジーに流してやると、涼やかな空気の動きにメイジーがびっくりしたように目をぱちぱちとさせている。
「気持ちいいー! オリアナって、風の精霊の家系なの?」
「まあ、正式に習ったことはないんだけれどね」
家が貧しい上に田舎だったからだが、それでも少しは使える。そよ風を流してやると、今まで暑そうだったメイジーの表情が明らかに緩んだ。
「うーん、最高!」
だが、その時だった。
「あなたたち」
草引きの最中、話しているのに気付いたのだろう。
華やかな羽根をあしらった扇子がすっと二階から伸び、こちらを示している。
「手が止まっているわね? なにか不満でもあるのかしら」
こちらを見下ろしたグレイシアが、美しい顔で、ふんと嘲るように尋ねてくるではないか。
「あなたたちは、この後宮で一度も陛下のお渡りがない身ですもの。妃として役に立たないのなら、せめてこれくらいはしなければ。無駄飯食らいと囁かれたくはないでしょう?」
「なっ――」
さすがに、メイジーがぶるぶると手を震わせている。
だから、余計にグレイシア様のご機嫌が悪いのよ、と上にはわからないように顔を寄せながらちらりと見上げている。
「へえー」
他でもやっているというのは知らなかった。そして、昨夜ライオネルは一緒に過ごさなかったと知って、オリアナはどこかホッとしたような気持ちになった。
(どうしてかしら。私がライオネル様に対して抱いているのは、そんな感情ではないはずなのに)
不思議な感覚に、オリアナが首を捻った時だった。
「あー、それにしても暑い」
見れば、ぽたぽたとメイジーの額からは汗が流れ続けている。
「せっかくのかわいい顔が台無しよ?」
本当に暑いのだろう。少しだけ手の先で風を起こしてメイジーに流してやると、涼やかな空気の動きにメイジーがびっくりしたように目をぱちぱちとさせている。
「気持ちいいー! オリアナって、風の精霊の家系なの?」
「まあ、正式に習ったことはないんだけれどね」
家が貧しい上に田舎だったからだが、それでも少しは使える。そよ風を流してやると、今まで暑そうだったメイジーの表情が明らかに緩んだ。
「うーん、最高!」
だが、その時だった。
「あなたたち」
草引きの最中、話しているのに気付いたのだろう。
華やかな羽根をあしらった扇子がすっと二階から伸び、こちらを示している。
「手が止まっているわね? なにか不満でもあるのかしら」
こちらを見下ろしたグレイシアが、美しい顔で、ふんと嘲るように尋ねてくるではないか。
「あなたたちは、この後宮で一度も陛下のお渡りがない身ですもの。妃として役に立たないのなら、せめてこれくらいはしなければ。無駄飯食らいと囁かれたくはないでしょう?」
「なっ――」
さすがに、メイジーがぶるぶると手を震わせている。