お飾り側妃になりましたが、ヒマなので王宮内でこっそり働きます! ~なのに、いつのまにか冷徹国王の溺愛に捕まりました~
 その日の昼過ぎ、オリアナは渡されたメイド服を持ったまま、住んでいるコンスレール宮とは違う後宮の一番端にある塔の階段を、こつこつと足音を立てながら上っていた。
 昼になったので草引きから解放され、メイジーとは昼食で別れた。とはいえ、頭に浮かんでくるのは、先ほどの彼女の言葉ばかりだ。
『もし本当にご懐妊で、正室の后に選ばれたりでもしたら! 権力を使って私たち下位の妃なんてみんな追い出されてしまうのに決まっているわ……』
 メイジーを励ますためにあの場で『なんとかできる』とは言ってみたものの、具体的にはどうすればいいのか。
「うーん、メイジーは家族の期待を一身に背負って後宮に来たようだし……」
 オリアナよりずっと裕福だが、同じように都から遠く離れた地方の男爵家。その令嬢が突然後宮へ行くことになり、王の寵愛を賜るかもしれない身分になったのだ。家族と領民の期待は、半端なものではなかっただろう。
(家族に顔向けできないと泣いている彼女の気持ちはわかるから、なんとかしてあげたいけれど……)
 いや、彼女のためだけではない。メイジーが追い出されるのなら、それは先ほどそばにいて、同じようにライオネルへのお目通りが叶っていないオリアナも一緒だ。
「故郷の子爵様に相談してみるとか?」
 オリアナがここに来ることになったきっかけの命を受けた子爵家当主の顔を思い浮かべてみる。息子のセイジュと同じく、真面目で穏やかな性格の人だ。真剣に考えてはくれるだろうが、中央の大貴族であるエメルランドル公爵家の令嬢が相手ではどうすることもできないだろう。
「だとしたら、後宮長様とか?」
 呟きながら、さらにかつんかつんと塔への階段を上っていく。
 いや、彼女は後宮内の揉め事を捌くのには長けていそうだが、グレイシアが懐妊してもし后となれば、自分より上の者を止める力はないに違いない。
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