初デートのすすめ
――よし!ここから挽回するんだからっ!
鏡を見て最終チェックをした後、賢斗の待つ席へ向かおうとしたところで「佐々原さん、こっちこっち」と呼ばれ、振り向いた。
賢斗がお店の出入り口のところに立っている。
萌が駆け寄ると、賢斗は「行こっか」と言って店の外へ出ようとした。
「あれ?お会計…」
「大丈夫。払っといたから。」
「え!?いくらだった?私、払う…」
「いいよいいよ。佐々原さん、あんまり食べてなかったし。店のチョイス間違ったかなーと思って、ちょっと反省してたんだ。だから奢らせて。」
にっこり笑う賢斗の顔は、どこか悲しそう。
萌は「ありがとう」と小さな声で御礼を言いながらも、胸が痛んだ。
「じゃあ、行こっか。」
と言って歩き出した賢斗。その背中がなんだか淋しげ見えて、泣けてきた。
「待って…っつ!」
歩き出した途端、足に痛みを感じた。
思わずうずくまる。
「佐々原さん!?」
驚いて駆け寄ってきた賢斗は萌の足を見て「血、出てるよ!大丈夫?」と慌てている。
「絆創膏、持ってる?」
賢斗に聞かれ、泣きながらふるふると頭を振る。
――女子力低いな、私。
絆創膏を持ってないことすら、今日のデートの失敗ポイントに思えて、また悲しくなる。