初デートのすすめ

「ちょっと待ってて!」 

そう言うと、賢斗は走ってどこかへ消えた。

人通りの少ない路上に1人になり、急に心細くなる。

――もうダメ。愛想尽かされた。

そう思ってうずくまって泣いていると、賢斗が猛ダッシュで戻ってきた。

「とりあえずこれ、貼っとこう。」

手に持っているのは真新しい箱に入った絆創膏。

「ごめん、コンビニで買ったから、傷薬とかはないけど…」

そう言いながら、血が滲んでいるところに優しく絆創膏を貼ってくれる。
暑い中走ってくれたからだろうか。賢斗のおでこには少しだけ汗が滲んでいる。

「ありがと…」

そう御礼を言うと、賢斗の優しさにまた泣けてきた。萌がまた涙を流しているのを見て、賢斗が慌ててフォローする。

「まだ痛いよね?ここ暑いし、さっきのお店で休んでも…」

「ごめんね、常磐君…」

「え!?」

「ごめんなさい…」

――こんなに気を遣わせて、デートを台無しにして。失敗ばっかりの私、ダメダメだ…。
< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop