例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
椅子に座る前に、沙耶は軽く姿勢を正し、三人に向かって口を開く。
「初めまして、秋元沙耶です。この度は皆様にご迷惑とご負担をおかけしてしまったこと、申し訳なく思っています。」
そして接客業で鍛えた45度を意識しながら、ペコっと頭を下げた。
「失礼します。」
そう言って、椅子に座る。
「ご挨拶とご説明にちょくちょく出入りさせて頂いてますので、顔見知りではありますが、私も一応。この度秋元財閥の顧問弁護士になりました、廣井です。」
隣にいた廣井も、沙耶と同じように挨拶してから、席に着いた。
「ご挨拶が遅れました。私、梟王百貨店専務の榊原です。」
まず冷たい感じの銀縁眼鏡が挨拶。
「一応俺も専務で、虎井って言います。」
続いてチャラい茶髪。
「僕は、常務で、朝比奈です。」
最後に、黒目がちの彼。
「ここに来ていただいたのは、他でもない、これからの梟王百貨店の経営についてです。」
進行していくのは、どうやら銀縁眼鏡――もとい、榊原のようだ。
「今回の買収により、我々梟王百貨店では、会長、社長、副社長全てを失う形になりました。石垣グループによるもの、と我々は考えていたので、石垣グループの傘下に入り、そこからの人間と経営をしていくものだと考えていました。」
「ところが。」
榊原の話に虎井が割って入る。
「どうやらそうじゃない。秋元家のご息女に全権が譲られたっていうじゃないですか。」
「ですから、それは、何度も説明している通り――」
雲行きが怪しくなっていく中、廣井が何か言い掛けるが。
「早い話が、ど素人の女に経営を丸投げ。ふざけた話に耳を疑うわ。」