例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても

「虎井、口調に気を付けなさい。」

まるで喧嘩を売っているような言い方に、榊原が窘める。
しかし、先程とは打って変わった虎井のきつい目つきは変わらない。

「私達は、今回の買収の一件に関してどんな経緯があったのか、何も知らされていないのです。あっという間に、今迄のリーダーが消えてしまった。いや、消されてしまった。」

榊原が前で手を組みながら、沙耶に訴える。

「俺らは先代に、恩も義理もある。誰の下でも良いから働いている訳じゃない。それなのに人を物のように扱う今回のやり方は、はっきり言って、最低だ。しかもあんたみたいな何の苦労もしてなさそうな女がこれから俺らのトップになるなんて。」

虎井は沙耶を憎々しげに見つめ――。

「あんたの下で働くなんて御免だね。」

吐き捨てるようにそう言い放つ。
今度は、榊原も何も言わない。
それは、虎井の言う事が、この三人の本音なんだという事を示していた。

「だけど、僕達はこの店を潰したいと思いません。従業員の事も守っていかなければなりませんし、この仕事に愛着もあります。」

「じゃ、どうしろって言うんですか?」

朝比奈が口を開き、廣井が訊ねた。

「つまり――」

それについて答えたのは、榊原だ。

「秋元沙耶さん。貴女にこの百貨店の権限を放棄していただきたい。」
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