例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「はっ、その約束っつーのが、訳わからん。廣井さんも何度か説明しにきてくれたけど、石垣程の企業が、一体何の約束があったら、あんたみたいな人をここまで持ち上げるのか、理解できない。」

虎井が、小馬鹿にしたように笑う。

沙耶と石垣と坂月の約束の詳細は、廣井も知らない。

ただ、『約束を果たした』とだけしか、聞いていないようだった。
そして、沙耶もそのことには深く触れなかった。

「ま、弱みでも握ってるか、愛人関係にあるか、どっちかだろ。」
「虎井。」

虎井の発言に、流石に榊原がストップをかけたのと――

ダン!!!

沙耶が机に手を付いて立ち上がったのとは、同時だった。

三人、いや四人の視線が、沙耶に集まる。


「理解できなくて結構です。その約束がどんなものであったか、詳細を述べるつもりはありません、絶対に。ですが――」


机に伝わるビリリ、という振動と。


「二度と、触れないでいただけます?」


にこりと、据わった目で微笑む沙耶。

< 36 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop